建設業の人手不足を乗り越える、人事業務の効率化と人員配置・育成の仕組みづくり

建設業では、就業者の高齢化と若年入職者の減少が長年の課題とされており、限られた人数でいかに現場を回すかが、多くの会社様にとって経営上の大きなテーマになっています。

人手不足そのものをすぐに解消することは難しい一方で、「今いる人員をどう配置し、どう育てるか」という人事業務の工夫によって、同じ人数でも対応できる現場の数や、社員の定着率は大きく変わってきます。

しかし中小規模の建設会社様では、人事担当の専任者がいないことも珍しくありません。人員配置や育成が、社長様や現場責任者様の経験と勘に頼った「属人的な運用」になっているケースが多く見られます。

属人的な運用は、担当者が忙しい時期や体調を崩したとき、あるいは異動や退職のタイミングで、一気に綻びが出やすいという弱点を持っています。

人事業務の効率化と聞くと、大がかりなシステム導入を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実際にはエクセルなどの身近な道具で始められる「仕組み化」だけでも、大きな効果を得られます。

「建設業の人手不足対策」というと、採用活動や求人広告の強化がまず思い浮かびますが、採用と同じくらい重要なのが、今いる社員をどう配置し、どう育てるかという「人員の適正配置」と「人材育成の仕組み化」です。

新しい人を採用しても、配置や育成の仕組みが整っていなければ、同じように定着しづらい状態が続いてしまいます。まずは自社の中にある「属人化」を洗い出すところから始めることが、遠回りに見えて実は近道になります。

■ 具体例

一つ目は、人員配置の情報が特定の担当者の頭の中にしかなかった事例です。ある会社では、どの職人がどの資格を持ち、どの現場に対応できるかという情報が、現場責任者一人の頭の中で管理されていました。

繁忙期に、その責任者が体調を崩して数日休むことになった際、誰がどの現場をカバーできるのか周囲が正確に把握できず、現場の割り振りが一時的に滞ってしまいました。結果として、急きょ他の現場から応援を回すなど、その場しのぎの対応に追われ、本来であれば防げたはずの混乱が生じてしまいました。

属人化した人員配置は、担当者が元気に働いている間は問題が表面化しにくいものの、いざというときに会社全体の弱点として露呈しやすいという特徴があります。

二つ目は、新人の育成が現場任せになっていた事例です。新しく入社した若手社員の教育が、現場の先輩社員に「見て覚えて」という形で任されており、教える内容や順序は先輩によってバラバラでした。

ある新人は、何を覚えればよいのか分からないまま日々の作業に追われ、次第にモチベーションを失って早期に離職してしまいました。育成が仕組みとして整っていない状態では、教える側の負担も一定せず、繁忙期には教育そのものが後回しにされがちになります。

せっかく採用した若手が定着しないことは、採用にかけた時間や費用の面でも、会社にとって大きな損失になります。

■ 解決方法

こうした課題は、人員配置と育成を「属人的な勘」から「仕組み」へと切り替えることで、少しずつ改善していくことができます。

一つ目は、人員配置情報の見える化です。誰がどの資格・技能を持ち、どの現場に対応できるかを一覧表(スキルマップ)にまとめておくと、担当者が不在になった場合でも、他の誰かが同じ情報をもとに判断できるようになります。エクセルなどの身近なツールで十分に始められます。

あわせて、各現場に「主担当」だけでなく「副担当」を決めておくと、急な欠員が出た際にも代役を探しやすくなります。

二つ目は、業務フローの整理です。現場ごとの役割分担や、朝礼から日報提出までの一日の流れを書き出し、「誰が何をすべきか」を明文化しておくと、代替の担当者が入った際にもスムーズに引き継ぐことができます。

三つ目は、多能工化(マルチスキル化)の推進です。特定の作業だけに偏らず、複数の工程を担当できる人材を計画的に育てていくことで、欠員が出た際にも配置の柔軟性が高まり、少ない人数でも現場を回しやすくなります。

多能工化は一朝一夕には進みませんが、「誰に、どの工程を、いつまでに覚えてもらうか」を年間計画として決めておくだけでも、育成が場当たり的になるのを防げます。

四つ目は、育成計画の仕組み化です。新人が入社してから一定期間で「何を、いつまでに、誰から学ぶか」を一覧化した育成計画表を用意しておくと、教える側・教わる側の双方が迷わない状態を作ることができます。先輩ごとに教え方がバラバラになることも防げます。

五つ目は、定期的な振り返りの場を設けることです。月に一度など、育成の進捗や人員配置の課題を確認する短いミーティングを設けることで、問題が大きくなる前に早期に発見できます。

六つ目は、ITツールやクラウドサービスの活用です。勤怠や人員配置の情報をクラウド上で共有できるツールを導入すれば、紙やエクセルだけに頼った属人的な管理から一歩抜け出しやすくなります。近年は、シフト作成や人員配置の検討を支援するAIツールも選択肢の一つとして広がってきています。

これらはいずれも、明日からすべてを完璧に整える必要はありません。まずは「今、誰が何をできるのかを書き出してみる」という小さな一歩から始めることが、属人化からの脱却につながります。

人員配置の適正化と人材育成の仕組み化は、どちらも一度整えて終わりではなく、現場の状況に合わせて継続的に見直していくものです。だからこそ、特別なプロジェクトとして構えるのではなく、日々の業務の中に「振り返りの習慣」として組み込んでおくことが、長く続けるコツになります。

■ おわりに

私は、人事労務の実務に10年以上携わり、大人数の労務管理や人事給与システムの導入、業務の見える化・フロー化による効率化に取り組んできた経験があります。

その経験から見ても、人員配置や育成の「仕組み化」は、特別なシステム投資がなくても、まずは現状を書き出して整理するところから始められるものだと感じています。

弊所では、行政書士としての許認可関連業務やバックオフィス支援に加えて、こうした業務の見える化・仕組みづくりについてのご相談を承ることがあります。人員配置や育成の悩みは、法律の問題というより「情報の整理と共有の仕組み」の問題であることが多く、人事の実務経験を踏まえた視点でお手伝いできる部分だと考えています。

ただし、就業規則の作成・届出や36協定の締結・届出など、社会保険労務士の専門業務にあたる法定の手続きについては行っておりませんので、その部分については社会保険労務士と連携しながら対応いたします。

「人員配置がいつも綱渡りになっている」「新人がなかなか定着しない」といったお悩みをお持ちの建設業の経営者様は、まずは自社の人員配置や育成の現状を書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。お気軽にホームページのお問い合わせフォームよりご相談ください。

\ 最新情報をチェック /

コメント

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました