「第二種電気工事士の免状を取ったから、あとは仕事を取るだけ」と考えて独立する方は多いのですが、実は免状があるだけでは電気工事業を営めません。
- 電気工事を自分で施工して仕事にするなら、工事の金額に関係なく「電気工事業の登録(または届出・通知)」が必要です。
- 請負金額が500万円(税込)以上の電気工事を受けるなら、別に「建設業許可」も必要です。
- 建設業許可を持っていても、電気工事業法に基づく「みなし登録」の届出は別に必要です。
この記事では、愛知県で電気工事業を始める方向けに、登録の要件、必要になるパターン、費用、登録後の注意点を整理します。
1. 電気工事士免状と電気工事業登録は別のもの
電気工事の作業には、一般用電気工作物なら第一種または第二種の電気工事士免状が必要です。これは「作業をする人」の資格です。一方、電気工事業の登録は「事業として営む会社・個人」に求められる手続きです。作業する人の資格と、事業者としての手続きの両方が必要になります。
2. 電気工事業登録と建設業許可の違い
名前が似ていますが、根拠となる法律や目的は別の制度です。
| 電気工事業登録 | 建設業許可(電気工事業) | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 電気工事業法 | 建設業法 |
| 目的 | 電気工事の保安(感電・火災の防止) | 発注者・下請の保護、施工の適正化 |
| 必要になる場面 | 電気工事を自ら施工して営む場合(金額は問わない) | 請負代金500万円以上(税込)の電気工事を請け負う場合 |
| 人の要件 | 主任電気工事士(営業所ごと) | 常勤役員等と専任技術者など |
| 有効期間 | 5年 | 5年 |
よくある誤解として下記3点があります。
- 「500万円未満の工事なら何も要らない」… 建設業許可は不要でも、電気工事業の登録は必要です。
- 「建設業許可があれば登録は不要」…愛知県は、許可を受けた場合も「みなし登録電気工事業者」の届出が必要としています。建設業許可の審査では、主任電気工事士や器具の備え付けといった電気工事業法上の要件は見ないためです。
- 「電気工事士の免状があれば開業できる」… 免状は個人の資格で、事業者としての登録とは別です。
3. 電気工事業登録が必要になるパターン
必要な手続きは、「建設業許可の有無」と「工事の種類」の組み合わせで決まります。
| 状況 | 必要な手続き |
|---|---|
| 建設業許可なし/一般住宅・店舗の工事(一般用)、または一般用+ビル・工場の工事 | 登録電気工事業者の登録 |
| 建設業許可なし/ビル・工場など自家用電気工作物のみ | 通知電気工事業者の通知 |
| 建設業許可あり/一般用を含む | みなし登録電気工事業者の届出 |
| 建設業許可あり/自家用のみ | みなし通知電気工事業者の通知 |
「一般用電気工作物」は、一般家庭や商店の屋内配線設備などです。「自家用電気工作物」は、ビルや工場などの設備です。電気工事業法の対象は、このうち最大電力500kW未満の需要設備です。
営業所が愛知県内だけなら、手続き先は愛知県知事です。愛知県外にも営業所を置く場合は、国(中部近畿産業保安監督部または経済産業大臣)の所管になります。
エアコンの設置工事も登録が必要です。 愛知県は、通常は一人で一連の作業を行うため、エアコン設置を業とするには登録が必要という見解です。
4. 登録が不要なケース
愛知県のよくある質問集では、次のようなケースを登録不要としています。
- 請け負った電気工事をすべて他社に下請けに出し、自分では一切施工しない場合
- 電気工事士がたまたま自宅の電気工事を行う場合
- 電気工事に当たらない軽微な工事(差込接続器へのコード接続など)だけを行う場合
- 登録業者のもとで、日雇いなどで工事の一部を手伝うだけの場合
ただし、一度でも自分で電気工事の作業を行えば登録が必要です。登録業者から工事の一部を請け負う下請になる場合も、登録が必要です。
5. 電気工事業登録の要件
① 主任電気工事士を営業所ごとに置く
一般用電気工事を行う営業所ごとに、主任電気工事士が必要です。なれる人は次のどちらかです。
- 第一種電気工事士の免状を持つ人
- 第二種電気工事士の免状の交付を受けた後、電気工事で通算3年以上の実務経験がある人(同一の会社でなくてもよい)
実務経験として認められるのは、一般用電気工作物を設置・変更する工事です。軽微な工事は含まれません。
主任電気工事士に選べるのは、個人事業主、法人の役員(代表者)、直接雇用の従業員のいずれかです。次の人は選べません。
- 他の営業所の主任電気工事士との兼務者
- 法人の監査役
- 電気工事施工管理技士の合格者など、他の資格だけを持つ人
注意したいのは、免状をもらったばかりの第二種電気工事士は、一人では登録できない点です。 実務経験が3年に達するまでは、第一種の免状を持つ人か、3年以上の経験を持つ第二種の人を雇って主任電気工事士にする必要があります。
② 検査用の器具を備え付ける
一般用の電気工事を行う営業所には、絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗と交流電圧を測れる回路計が必要です。自家用の電気工事(通知)では、これに低圧検電器・高圧検電器・継電器試験装置・絶縁耐力試験装置が加わります。後ろの2つは借用でも認められています。
③ 欠格要件に該当しない
申請者、役員、主任電気工事士が、電気工事業法第6条の欠格要件に当たらないことも必要です。
6. 費用・手続きの流れ
愛知県の新規登録の手数料は22,000円、標準処理期間は10日で、有効期間は5年です。更新は12,000円です。
申請は、営業所の所在地を管轄する県民事務所等に行います。名古屋市内の営業所は、県の消防保安課 産業保安室が窓口です。一般的に、登録申請書、誓約書、実務経験証明書(第二種の場合)、備付器具調書、免状の写し、登記事項証明書(法人)などを用意します。様式や部数は、必ず愛知県の最新の案内で確認してください。
7. 登録後に忘れがちな5つのこと
- 更新を忘れない
更新の目安は有効期間満了の約1か月前までです。失効すると、新規登録扱いで22,000円がかかり、その間は電気工事業を営めません。 - 主任電気工事士が辞めたら、2週間以内に後任を選任する
その後30日以内に変更届を出します。後任がいなければ廃止届が必要です。 - 標識を掲示する
各営業所と施工場所に掲げます(1日で終わる工事を除く)。 - 帳簿を5年間保存する
- 建設業許可を取ったら、登録を「みなし登録」に切り替える
登録廃止届と、みなし登録の開始届を提出します。許可を更新するたびに、変更届と許可書の写しの提出も必要です。
8. よくある質問
Q. 個人事業主の一人親方でも登録できますか?
A. できます。自分が主任電気工事士の条件(第一種、または第二種+3年の実務経験)を満たしていれば、自分が主任電気工事士を兼ねられます。
Q. 愛知県で登録すれば、他県の現場でも工事できますか?
A. できます。登録した県以外でも工事は可能です。ただし、主任電気工事士が作業管理を適切に行える体制が必要です。
Q. 建設業許可と電気工事業登録は、どちらを先に取るべきですか?
A. 請け負う工事が500万円未満中心なら、まず電気工事業登録で始められます。500万円以上の工事を受ける見込みが出たら、建設業許可を取り、そのとき「みなし登録」に切り替えます。
まとめ
- 電気工事を自ら施工して営むなら、金額に関係なく登録・届出・通知が必要
- 建設業許可は別制度。500万円以上の工事で必要になり、許可後もみなし登録の届出が要る
- 登録の中心は、主任電気工事士の確保と器具の備え付け
- 更新忘れと、許可取得後・許可更新後の届出漏れに注意
「自分の場合はどの手続きが必要か分からない」「建設業許可と電気工事業登録を同時に進めたい」という方は、ふくおか行政書士事務所へお気軽にご相談ください。
参考(公式情報)

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