【2026年最新】建設業法改正で何が変わった?労務費・見積り・契約書で今すぐ見直すべきポイント

「最近、取引先から見積りの内訳を細かく聞かれるようになった」「契約書のひな形を見直してほしいと言われた」——そんな変化を感じている建設会社様、いらっしゃいませんか。

実はこれ、2025年12月に全面施行された改正建設業法の影響です。今回の改正は、これまでの「安ければ良い」「とりあえず一式見積りでOK」という商慣習そのものにメスを入れる内容になっています。

この記事では、建設業に関わる方が押さえておくべき改正のポイントと、バックオフィス側で今すぐ着手すべき実務対応を整理してご紹介します。

なぜ今回の改正が重要なのか

建設業界は長年、担い手不足・長時間労働・価格競争の激化という課題を抱えてきました。こうした状況を受けて、2024年に成立したいわゆる「第三次担い手三法」(改正建設業法・改正入契法・改正品確法)が段階的に施行され、2025年12月12日に全面施行を迎えています。

今回の改正は、元請から下請への一方通行の話ではありません。下請から孫請け、さらには施主から元請まで、取引のあらゆる階層に関わってくる点が特徴です。「うちは下請だから関係ない」「元請だから大丈夫」ということはなく、すべての建設事業者が対応を求められています。

改正の3本柱

今回の改正で明確に禁止された事項は、大きく3つに整理できます。

① 著しく低い労務費等を前提とした見積依頼・見積提示の禁止

これまで資材や人件費が上がっても、実態に合わない安い見積りが現場でまかり通っていたケースがありました。改正後は、労務費や材料費を適切に積算しない見積依頼、内訳を明示しない「一式見積り」への依存、不当に低い労務費での見積提示が明確に禁止されています。

② 原価を下回る受発注(原価割れ契約)の禁止

「利益がほとんど出ないが、仕事が欲しいから受ける」という安値受注の構造にもメスが入りました。施工原価を割った契約は違法となり、受注者側にも適正利益を確保した見積りが求められます。

③ 工期ダンピング(異常に短い工期)の禁止

長時間労働や施工不良の温床となってきた過密な工期指定も禁止対象です。ポイントは、発注者だけでなく受注者側も「非現実的な工期を安易に受け入れてはいけない」とされたことです。元請からの指示が短すぎる場合は、協議を行うことが求められます。

国交省が示す「労務費を下回るおそれのある取引」6類型

これらの禁止事項をより具体的にイメージできるよう、国土交通省は2026年1月、労務費が適正に確保されないおそれのある取引について、代表的な6つの類型を公表しました。

  • 労務単価を見直さず据え置いたまま見積りを作成している
  • 明確な理由なく一律の比率で減額を求めている
  • あらかじめ決まった予算から逆算して労務費を調整している
  • 相見積りの中で最安値に他社を合わせさせている
  • 長年の取引関係を理由に十分な説明なく労務費を引き下げている
  • 工事の難易度に関わらず同じ歩掛(基準)を使い続けている

いずれも「これまで当たり前にやっていたかもしれない」内容ではないでしょうか。心当たりがある場合は、見積り・契約のプロセスを見直すタイミングです。

バックオフィスとして今すぐ着手すべきこと

法改正の内容を理解しても、実際に社内の仕組みを変えなければ意味がありません。特に建設業では、事務担当が少人数で現場対応に追われ、契約書や見積りのフォーマット整備が後回しになりがちです。以下は、今すぐ着手できる実務対応です。

1. 見積書の内訳を明確化する

「外注一式〇〇円」ではなく、職種ごとの労務費・材料費を分けて記載する形に見直しましょう。内訳が明確であることが、適正価格の説明力につながります。

2. 契約書のひな形を見直す

工期調整に関する条項、物価変動時の代金変更に関する条項、労務費・材料費の内訳開示について、契約書に反映されているかを確認しましょう。古いひな形をそのまま使い続けている会社様は少なくありません。

3. 標準工期・原価チェックの仕組みを作る

社内で標準的な工期の目安を持っておくことで、無理な工期を契約前に調整しやすくなります。あわせて、利益率の基準を設定し、原価割れになっていないかをチェックする体制も有効です。

4. 記録を残す習慣をつける

工期の調整を協議した記録、見積りの根拠資料などは、後々「会社を守る証拠」になります。口頭でのやり取りで済ませず、書面やメールで残す習慣が重要です。

5. 施主・元請への説明資料を用意する

「なぜこの価格なのか」「なぜこの工期なのか」を説明できる資料をあらかじめ用意しておくと、交渉の場でも慌てずに対応できます。労務費の内訳や工期の根拠を示す簡単な資料を一枚用意しておくだけでも、説明力は大きく変わります。

「分かってはいるが手が回らない」という会社様へ

ここまで読んで、「言っていることは分かるが、日々の現場対応に追われて契約書の見直しまで手が回らない」と感じた方も多いのではないでしょうか。実際、建設業では現場や職人の管理が優先され、事務担当者が少人数、あるいは経営者自身が事務作業を兼務しているケースも珍しくありません。

契約書のひな形整備、見積書のフォーマット変更、経審の様式確認といった作業は、一つひとつは難しくなくても、まとまった時間を取らないと着手できないものです。後回しにしているうちに、気づけば取引先から指摘を受けてから慌てて対応する、という事態も起こり得ます。

このような書類・様式まわりの整備は、行政書士が得意とする分野でもあります。労務費の交渉や契約の締結そのものは各社の経営判断になりますが、契約書のひな形整備や、許可・経審に関わる書類の整理といった部分は、外部の専門家をうまく活用することで、現場対応に集中しながら足元を固めることができます。

特定建設業許可の基準額も引き上げられている

今回の労務費・工期に関する改正とあわせて、見落とされがちなのが金額基準の変更です。2025年2月1日施行の建設業法施行令改正により、特定建設業許可を必要とする下請代金の基準額が引き上げられました。従来は4,500万円以上の下請契約を締結する場合に特定建設業許可が必要でしたが、改正後は5,000万円以上に変更されています。建築一式工事の場合は、7,000万円以上から8,000万円以上への引き上げです。

これは近年の資材費・労務費の高騰を踏まえた見直しですが、「うちは今まで特定建設業許可が必要なかったから」と油断していると、契約金額の推移によっては認識がずれてしまう可能性があります。下請契約の金額が基準に近い会社様は、あらためて自社がどちらの許可区分に該当するのかを確認しておくことをおすすめします。

また、専任の監理技術者等を要する請負代金額の下限についても、2025年2月の改正で引き上げが行われています。請負金額によっては、ICTを活用した遠隔での現場確認を条件に、現場技術者の兼任が可能になったケースもあります。担い手不足への対応として、こうした専任義務の合理化も同時に進んでいる点は押さえておきたいポイントです。

違反した場合はどうなるのか

「禁止された」と言われても、実際にどのような対応が取られるのかが気になるところだと思います。著しく低い労務費等で見積りを依頼した発注者に対しては、国土交通大臣が勧告・公表を行う仕組みが整えられました。一方、著しく低い労務費等で見積りを提示した受注者側も、指導・監督の対象となります。

つまり、発注する側・される側のどちらであっても、「知らなかった」では済まされない制度になっているということです。特に元請から下請へ発注する立場にある会社様は、自社が発注者として勧告の対象にならないよう、見積り依頼の出し方そのものを見直す必要があります。

経営事項審査(経審)の様式も変わる

今回の建設業法改正の流れを受けて、経営事項審査(経審)の審査基準や様式についても見直しが予定されています。令和8年(2026年)7月1日の建設業法施行規則の改正にあわせて、経審の手引きが改正され、同日以降に審査行政庁へ申請書が到達した場合は新様式での受付となる予定です。

経審は毎年決まった時期に対応する業務であるため、「昨年と同じ様式で出せばいい」という感覚になりがちですが、様式変更のタイミングを見落とすと、書類の差し戻しや手続きの遅れにつながることがあります。特に決算期と経審のスケジュールが重なる会社様は、今のうちに最新の様式・手引きを確認しておくと安心です。

まとめ

今回の建設業法改正は、労務費・工期・契約に関するルール変更にとどまらず、特定建設業許可の基準額や経審の様式など、周辺の制度にも影響が及んでいます。単なる規制強化ではなく、業界全体に「適正な取引への転換」を促すものであり、見積り・契約・工期の透明性を高めた会社が、取引先からも職人からも選ばれる存在になっていくはずです。

とはいえ、契約書のひな形整備や書類の整理は、日々の現場対応に追われる中では後回しになりがちです。「何から手をつけていいか分からない」「うちの契約書、大丈夫か見てほしい」という場合は、書類面の整理からお気軽にご相談ください。

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