「一人親方だけど、そろそろ建設業許可を取った方がいいのかな」
「法人化(法人成り)したいけど、今持っている許可はどうなるの?」
独立して一人親方として活動されている方から、こうしたご相談をいただくことが増えています。この記事では、一人親方が建設業許可を取得するための要件と、**法人化するときに許可を引き継ぐ方法(事業承継の認可制度)**について、法的根拠を示しながらわかりやすく解説します。
一人親方でも建設業許可は取得できる
まず大前提として、個人事業主(一人親方)のままでも建設業許可は取得できます。「許可=法人でないと無理」というイメージを持たれている方も多いのですが、そんなことはありません。
建設業法第3条により、建設業許可が必要になるのは、税込500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を請け負う場合です。元請から「許可を取ってほしい」と言われたり、対応できる工事の幅を広げたいという理由で、一人親方のまま許可取得を目指す方は珍しくありません。
【法的根拠】建設業法第3条(建設業の許可)
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
一人親方の建設業許可の要件|経営業務の管理責任者(経管)
建設業許可を取るうえで、一人親方が最初にクリアすべき関門が「経営業務の管理責任者」の要件です。建設業法第7条第1号で定められている許可基準のひとつです。
2020年10月施行の改正建設業法により、「経管」という肩書きそのものは条文上廃止され、現在は常勤役員等が適切な経営管理体制を有しているかという形で審査されます。とはいえ実務上は、事業主本人が次のいずれかの経験を持っているかどうかが基本的な判断軸になります。
- 建設業に関し、経営業務の管理責任者としての経験が5年以上
- 経営業務の管理責任者に準ずる地位で、経営業務を管理した経験が5年以上
- 経営業務の管理責任者に準ずる地位で、管理責任者を補助する業務に従事した経験が6年以上
つまり、独立して一人親方として何年やってきたか(=経営経験の年数)がそのまま許可要件に直結するということです。電気工事や大工など、現場一筋でキャリアを積んできた方の場合、独立後の経験年数をきちんと証明できるかどうかが最大のポイントになります。
専任技術者の要件
もう一つの必須要件が「専任技術者」です(建設業法第7条第2号)。これは、工事の契約内容どおりに現場を進められる技術力を持つ人を、営業所ごとに常勤で配置しなければならないというルールです。
一人親方の場合、経営業務の管理責任者と専任技術者を本人が兼任することが可能です。資格(施工管理技士など)を持っていればスムーズに証明できますし、資格がなくても実務経験(業種によって10年など)で証明する方法もあります。
その他の要件(誠実性・財産的基礎)
建設業法第7条・第8条では、上記2つに加えて次の要件も定められています。
- 誠実性:過去に建設業法違反などで許可取消しを受けていないこと
- 財産的基礎:自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があること
- 欠格要件に該当しないこと:不正に許可を受けて取消しを受けてから5年以内でないことなど
個人事業主の場合、「自己資本500万円」の証明は、直近の確定申告書(貸借対照表)や残高証明書で行うのが一般的です。開業したばかりで資産形成が追いついていない方は、この財産的基礎の証明で苦労するケースが少なくありません。
【法的根拠】建設業法第7条(許可の基準)・第8条(欠格要件)
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
国土交通省 関東地方整備局「許可の要件について」
https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/kensan00000052.html
建設業許可を取った一人親方が法人化(法人成り)するとき、許可はどうなる?
一人親方として許可を取得したあと、事業拡大にあわせて法人化を検討される方も多いです。ここで必ず押さえておきたいのが、「建設業許可の引き継ぎ(事業承継)」の問題です。
かつては「空白期間」が生まれていた
2020年10月の改正建設業法施行より前は、個人から法人に切り替える場合、個人事業の許可を廃業し、法人として新規に許可を取り直すしか方法がありませんでした。この方法だと、法人の許可が下りるまでの間、500万円以上の工事を請け負えない「空白期間」が発生し、元請からの信用にも影響しかねないという大きなデメリットがありました。
現在は「事業承継の認可制度」で引き継げる
2020年10月施行の改正建設業法第17条の2(事業譲渡・合併・分割)・第17条の3(相続)により、建設業許可を承継できる認可制度が新設されました。事前に許可行政庁の認可を受けることで、
- 許可番号・許可日付の連続性を維持できる
- 空白期間なく法人として営業を継続できる
- 個人時代の経営経験・技術経験を、法人の許可要件の証明に活用できる場合がある
といったメリットがあります。従来型の「廃業→新規取得」は、空白期間や経営事項審査(経審)のリセットといったデメリットが大きく、承継認可が制度化された今では積極的に選ぶ理由がほとんどありません。
【法的根拠】建設業法第17条の2(建設業者の地位の承継)・第17条の3(相続)
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
国土交通省 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
法人化のタイミングで気をつけたいこと
承継認可を受けるには、事業譲渡の効力発生日より前に認可を受けておく必要があります。つまり「先に法人を設立して、個人の廃業届を出してから慌てて相談する」という順番では手遅れになりかねません。法人化を決めたら、できるだけ早い段階(法人設立の準備段階)で許可行政庁への事前相談・書類準備を進めることが重要です。
なお、法人化に伴う社会保険・税務上の手続きについては専門外となるため、社会保険労務士・税理士など各専門家への相談をおすすめします。当事務所では、建設業許可の承継認可申請・法人設立に伴う許可まわりの手続きをサポートしております。
よくある質問(FAQ)
Q. 一人親方でも建設業許可を取れますか?
A. 取得できます。個人事業主のまま、経営業務の管理責任者・専任技術者などの要件を満たせば許可を受けられます。
Q. 法人化すると建設業許可はどうなりますか?
A. 何もしなければ、いったん個人の許可を廃業し、法人として新規に取り直す必要があります。ただし2020年10月施行の改正建設業法により、事前に「事業承継の認可」を受けることで、空白期間なく許可番号を引き継ぐことが可能です。
Q. 事業承継の認可はいつまでに申請すればいいですか?
A. 事業譲渡(法人成り)の効力が発生する前に、許可行政庁の認可を受けておく必要があります。法人化を決めたら早めに相談しましょう。
まとめ
- 一人親方でも建設業許可は取得できる。ポイントは経営業務の管理責任者と専任技術者の要件(建設業法第7条)
- 独立後の経験年数がそのまま許可要件に直結するため、早めの準備がカギ
- 法人化する際は「廃業→新規取得」ではなく、2020年改正建設業法第17条の2で新設された「事業承継の認可制度」を使うことで空白期間を避けられる
- 認可は事業譲渡の効力発生前に受ける必要があるため、法人化を決めたら早めに相談を
一人親方から法人化、そして事業拡大へ——このステップを踏む建設業者様は年々増えています。建設業許可の取得・引き継ぎで損をしないよう、お早めにご相談ください。
参考(法的根拠)リンク
- 建設業法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
- 国土交通省 関東地方整備局「許可の要件について」:https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/kensan00000052.html
- 国土交通省 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」:https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf

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