2027年(令和9年)4月1日から、技能実習制度に代わる新しい外国人受入れ制度「育成就労制度」が始まります。外国人材を受け入れている、または検討している建設業・製造業の事業者にとって、採用・賃金・定着の考え方が大きく変わる転換点です。
この記事では、2026年10月時点で公表されている出入国在留管理庁・経済産業省・厚生労働省などの資料をもとに、制度の概要と、建設業・製造業への影響を整理します。
要点
- 育成就労は、技能実習の「国際貢献」から「人手不足分野での人材育成・確保」へ目的を転換した制度で、2027年4月1日に施行されます。
- 受入れ期間は原則3年。特定技能1号水準の人材に育てることを目指す、特定技能へのステップアップ型の制度です。
- 一定の要件を満たせば、本人の意向による転籍(転職)が可能になります。
- 建設・工業製品製造業はいずれも転籍制限期間が2年で、昇給などの待遇面が従来以上に問われます。
- 受入れ見込数は、建設が12万3,500人、工業製品製造業が11万9,700人(いずれも育成就労分)です。
1. 育成就労制度とは
育成就労制度は、令和6年(2024年)6月21日に公布された改正法により創設された制度です。技能実習制度が「技能移転による国際貢献」を目的としていたのに対し、育成就労制度は「人手不足分野における人材の育成・確保」を目的としています。
外国人は在留資格「育成就労」で、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を身につけます。技能実習1号〜3号の区分は廃止され、育成就労の期間は通算3年の計画として認定を受けます。
2. 技能実習制度との主な違い
| 項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 目的 | 技能移転による国際貢献 | 人材の育成・確保 |
| 在留資格 | 技能実習(1号〜3号) | 育成就労 |
| 期間 | 最長5年(1年+2年+2年) | 原則3年(試験不合格の場合は最長1年延長) |
| 転籍 | 倒産などやむを得ない場合を除き原則不可 | やむを得ない場合に加え、一定要件のもと本人意向でも可能 |
| 日本語 | 入国時の要件は職種により異なる | 就労開始前から段階的に試験で確認 |
| 受入れ先の区分 | 職種・作業 | 産業分野・業務区分(主たる技能) |
| 計画の認定 | 技能実習計画(実習生ごと) | 育成就労計画(外国人育成就労機構が認定) |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 |
3. 押さえておきたい制度のポイント
(1) 特定技能へつながるキャリアパス
育成就労(3年)から特定技能1号(通算5年)、さらに特定技能2号(在留期間の更新に上限なし・家族帯同可)へと続く、連続したキャリアパスが設計されています。受入れ企業にとっては、最長で長期にわたり戦力として育てられる点が大きな変化です。
(2) 技能と日本語は段階的にチェック
| 時期 | 技能 | 日本語 |
|---|---|---|
| 就労開始前 | 要件なし | A1相当の試験に合格、または相当する講習(100時間以上)の受講 |
| 1年経過時 | 技能検定基礎級等に合格 | A2.1相当の試験に合格(水準は分野ごとに設定) |
| 育成就労の終了時 | 技能検定3級・特定技能1号評価試験等に合格 | A2.2相当の試験に合格(JLPT N4等) |
受入れ企業には、3年の間にA2相当の日本語講習(100時間以上)を受ける機会を提供することも求められます。試験の水準は分野別運用方針で定められており、分野によってより高い水準が求められる場合があります。
(3) 本人意向の転籍が可能に
従来は原則として認められなかった転籍が、次の要件を満たす場合に認められます。
- 同一の受入れ機関での就労が、分野ごとに定められた「転籍制限期間」(1〜2年)を超えていること
- 技能検定基礎級等と、一定水準以上の日本語試験に合格していること
- 同一の業務区分内での転籍であること
- 転籍先が、育成就労を適正に実施できる基準を満たしていること
転籍制限期間は、介護・建設・工業製品製造業・造船舶用工業・自動車整備・飲食料品製造業・外食業・資源循環の8分野が2年、その他の分野が1年とされています。
(4) 送出し・監理の適正化
- 外国人が送出機関に支払う費用は、月給の2か月分が上限です。
- 原則として、二国間取決め(MOC)を結んだ国の送出機関から受け入れます。
- 技能実習の「監理団体」は「監理支援機関」へ、「外国人技能実習機構」は「外国人育成就労機構」へと再編されます。
(5) 対象は17分野
育成就労の対象は、特定技能の19分野から自動車運送業と航空を除いた17分野です。建設、工業製品製造業、飲食料品製造業、介護、農業などが含まれます。
(6) 受入れ人数枠
受入れ人数は、受入れ企業の常勤職員の総数に応じて上限が決まります。たとえば常勤職員が301人以上の場合、基本人数枠は総数の20分の3(15%)で、優良な受入れ機関の場合は2倍・3倍に広がる仕組みです。
4. 建設業への影響
建設分野は、育成就労で最も受入れ見込数が大きい分野です(12万3,500人。特定技能1号の7万6,000人と合わせて約20万人規模)。
受入れの主な要件
- 建設業法第3条の許可を受けていること(監督処分から5年を経過していない者は不可)
- 事業者と外国人の両方が建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録されていること
- 国土交通省の建設分野の協議会に加入すること(JAC=建設技能人材機構などに所属していれば加入とみなされます)
- 自社が直接雇用すること(派遣形態は不可)
- 同じ業務に従事する日本人と同等額以上の報酬を安定的に支払うこと
- 転籍制限期間を2年とする場合は、2年目の昇給などの待遇向上が必要
- 受入れ人数は常勤職員数に応じた上限があり、外国人は人数枠の計算の基礎となる常勤職員に含まれません
業務の範囲
建築・土木ともに、技能実習で認められていた職種を基本に、鉄筋継手(圧接)が新たに主たる技能として追加される予定です。
実務への影響
- 賃金・昇給制度の設計が選ばれる条件になります。転籍が可能になるため、「受け入れたら終わり」ではなく、給与水準・処遇・教育で選ばれる職場づくりが必要です。
- CCUSの運用が前提になります。事業者登録だけでなく、技能者の登録と就業履歴の蓄積を日常業務に組み込む準備が必要です。
- 見込数が2年間の枠として運用されるため、早めの計画づくりが重要です。
- 日本語講習の機会提供や安全衛生教育など、育成の負担と責任が増します。
5. 製造業(工業製品製造業)への影響
工業製品製造業は、育成就労の受入れ見込数が11万9,700人と、建設に次ぐ大規模な分野です。特定技能1号(19万9,500人)と合わせると約32万人規模になります。
受入れの主な特徴
- 外国人が従事できる業務区分は17区分(特定技能と同じ)で、区分ごとに定められた「主たる技能」を1つ決めて習得します。
- 業務区分に該当するだけでなく、事業所が経済産業省告示で定める日本標準産業分類に該当する必要があります。技能実習では受入れできていた企業でも、育成就労では産業分類の要件を確認する必要があります。
- 転籍制限期間は2年です。受入れ企業が1年を選ぶこともでき、2年を選ぶ場合は、協議会が毎年設定する昇給率に沿って1年目から2年目にかけて所定内給与を引き上げる待遇向上策が求められます。
- 直接雇用が前提で、経済産業大臣の登録を受けた法人(例:JAIM)の会員になる、または協議会に加入するなどの手続きが必要です。
実務への影響
- 自社の事業所がどの産業分類・業務区分に当たるのか、受入れ可否の事前確認が最初のステップになります。
- 中小の製造業では、転籍による人材流出リスクと、昇給負担のバランスを踏まえた制度設計が課題になります。
- 特定技能につながるため、日本語・技能試験の合格支援を含めた育成計画づくりが、定着と戦力化のカギになります。
- 一部の主たる技能(真空成形、フィルム加工、バフ研磨など)は令和8年度に追加が検討されているため、最新情報の確認が必要です。
6. 技能実習からの経過措置
- 2027年4月1日時点で来日している技能実習生や、2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請がされ、6月30日までに実習を開始する人は、原則として認定計画に基づき技能実習を継続できます。
- 施行日時点の1号技能実習生は、2号技能実習への移行が可能です。
- 施行日時点で2号技能実習を1年以上行っている人は、3号技能実習への移行が可能です。
- すでに特定技能1号の通算在留期間の上限に達している人など、特定技能へ移行する余地のない人は、育成就労外国人にはなれません。
- 施行に先立ち、監理支援機関の許可申請は令和8年4月15日から、育成就労計画の認定申請(施行日前申請)は令和8年9月1日から受付が始まっています。
7. 事業者が今のうちに準備しておきたいこと
- 自社の分野・業務区分・産業分類が育成就労の対象かを確認する
- 建設業は建設業許可の状況とCCUS登録、協議会(JAC等)への加入を確認する
- 製造業は登録法人への加入や協議会の手続きを確認する
- 賃金テーブル・昇給ルールを見直し、転籍制限期間を1年・2年のどちらにするか検討する
- 日本語講習や安全衛生教育の実施体制を整える
- 監理支援機関・送出機関の選定と、費用負担の分担を確認する
- 現在の技能実習生の在留状況と、施行後の移行スケジュールを整理する
まとめ
育成就労制度は、外国人材を「一時的な実習生」ではなく、特定技能へと育てながら長く働いてもらう人材として位置づける制度です。転籍が可能になることで、賃金・処遇・教育の質が、受入れ企業の選ばれやすさに直結します。建設業も製造業も、分野ごとの上乗せ要件があるため、早めに自社の要件を確認し、準備を進めることが大切です。
※本記事は2026年10月23日時点の公表資料に基づきます。分野別運用方針・運用要領は更新されることがあるため、手続きの際は必ず最新の公的資料をご確認ください。

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